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■書籍紹介
タイトル:希望の糸
著者名:東野圭吾
出版社:講談社
初版発行日:2019/7/5
■「希望の糸」とは
『あなたが話さないかぎり、真相は永久に謎のまま、すべてはあなた次第ーー』
病院で死を迎えようとする男性、ぎくしゃくしている父と娘、巡り合いを大切にしていた女性…
難航する捜査が進むと共に見えてくる、複雑に絡み合う家族の物語です。
■ 著者紹介
1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部電気工学科卒。
1985年『放課後』で江戸川乱歩賞、1999年『秘密』で日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で直木賞、本格ミステリ大賞を受賞。
他、『白夜行』『マスカレード・ホテル』『沈黙のパレード』など多数。
■ 主な登場人物
・松宮脩平…警視庁捜査一課の刑事
・松宮克子…脩平の母
・加賀恭一郎…警視庁捜査一課の刑事であり主任。脩平と従兄弟
・芳原亜矢子…旅館を経営する女将
・芳原真次…末期癌で入院中。亜矢子の父
・花塚弥生…カフェの経営者
・綿貫哲彦…弥生の元夫
・中屋多由子…哲彦の内縁の妻
・汐見行信…震災で2人の子供を亡くした
・汐見萌奈…行信の子供
■ あらすじ
カフェで女性が殺された。
背中に刺さったナイフは心臓に達しており、ほぼ即死。
被害者に関する手掛かりは「いい人」というだけ。
周囲から慕われ、愛されていた彼女はなぜ殺されたのか。
一方、金沢で一人の男性が息を引き取ろうとしていた。
遺言書の最後のページには、衝撃の内容と意外な人物の名前が。
死を覚悟した彼は、誰に、何を書き残したいと思ったのか。
明らかにされた真相とは果たして…
■ 作品のポイント
・命の誕生
人にはそれぞれ事情があります。
子供が欲しいと切に願っても授からない人もいれば、予期せぬタイミングで新たな命を宿す人も存在する。
ここで伝えたいのは、生まれてくることの奇跡です。
「命は大切に」という言葉はよく聞きますよね。
ですが、なんとなく分かっているのと、心の真ん中で理解するのとでは別物だと感じています。
何か少しでもズレれば、母があのとき別の選択をしたなら、自分はこの世に存在しなかったかもしれない。
自分の命と共に、生まれるまでの背景を考えてみては如何でしょうか。
・生きがい
『たとえ会えなくても、自分にとって大切な人間と見えない糸で繋がっていると思えたら、それだけで幸せ。
その糸がどんなに長くても希望を持てる。
だから死ぬまで、その糸は離さない』
人が抱く思いは絶大です。
辛いことがあっても、諦めそうな時があっても、ひとりでも大切な人がいれば前を向いて歩いていける。
共に過ごした時間や距離で全てが決まるわけではありません。
思いの強さが人を生きながらえさせ、絶望を希望に変えてくれます。
遠くにいても繋がる糸。
上記の言葉を読み返せば読み返すほど、心に染みわたってきます。
・脩平の葛藤
『他人の秘密を暴くことが常に正義なんだろうか。警察に、そんな権利があるんだろうか』
捜査が進むほどに家族の複雑性を知った脩平は悩みます。
知らないままの方がいいことを考えつつも、知ってしまった以上は確かめずにはいられない。
正義の在り方。
真相を暴くことで誰かの人生を左右させてしまうかもしれないという思い。
ここに頭を悩ませるところに、脩平が人としても刑事としても成長していることが伺えます。
その後、加賀が脩平に投げかけた言葉も粋です。
・萌奈の思い
『あたしはあたし。誰かの代わりに生まれてきたなんて思いたくない』
生まれた時から身代わりにされ、溜め込んでいたものが爆発した萌奈。
親の期待に応えなければと思うほど、着実に心は疲弊していたんですよね。
どれほどの苦しみを抱えてきたことでしょう。
子供は想像以上に親の反応を見ています。
感受性の強い子供であれば尚更です。
そして、とある仮説が浮かび上がることも…。
感情が絡み合った中、萌奈が求めていたのはただひとつの言葉だったんです。
■ 「希望の糸」の総括
複雑な家族の形が描かれ、胸が締めつけられる思いを抱きました。
同時に、心に温かさを覚えたのも事実です。
家族の在り方、出生の真実、彼らの秘密…
それぞれの背景が浮かび上がる中、何が正しいかなんて分かりません。
ただ、誰もが本当の家族を求めてたんです。
記事について
■執筆者情報
名前:まっちゃ
職業:Kindle作家
「Lectio」小説読書会オーナー
作品:https://amzn.to/3UUnOWU https://amzn.to/3M11XZS
Twitter:https://twitter.com/maccya_book