ほめは「圧」!?若者は今、「いい子症候群」から抜け出せない|先生、どうか皆の前でほめないで下さい

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■書籍紹介

■書籍情報

タイトル:先生、どうか皆の前でほめないで下さい
著者名:金間
大介
出版社:東洋経済新報者
初版発行日:2022/3/31 

■「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」の概要

「均等であること」
「目立ちたくない」
「匿名にしたとたんに手が挙がる」

現代の若者の一挙手一投足を、温かく、ジョークを交えつつも、ピシャリと適切に語るのは、現在、金沢大学 融合研究域融合化学系教授、東京大学未来ビジョン研究センター客室教授を勤める金間大介氏。

本書は、大学生を含む現在の若者たちを対象にして、彼らが何を敏感に感じ取り、何を重視して行動を取っているか、その複雑で微妙な真理を解説した「現代若者のトリセツ」とも言えるだろう。

世間ではよく、今の若者のことを「素直で良い子」「真面目で良い子」と評すると同時に、「何をか考えているのかわよくわからない」「自らの意思を感じない」との評価もある。

本書では、このような若者のことを「いい子症候群」と称し、一見不可解な彼らの気質と愛すべき特徴が、コミカルに描かれている。

■こんな人に読んでほしい

・若者との付き合い方に悩んでいる会社の上司
・子供たちの行動がよく理解できない教育関係者
・若者に対して、「物足りない」「イライラする」と感じている方

上記に1つでも当てはまるなら、ぜひ本書を手にとって、若者の真理を掴み、行動に変化を加えてください。

若者のハートを掴んで、心の距離を近づけることに成功します。

部下や生徒に対して抱えていたイライラは解消され、さらに彼らの成長を手助けする行動が取れるはずです。

■「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」のピックアップポイント

20代半ばまでの若者を想定して書かれた本書には、行動原則や心理的特徴を「いい子症候群」として表現している。

「いい子症候群」とは一体何なのか。いくつかの例を挙げると、

・周りと協力できて、協調性がある。
・学校や職場などでは、横並びが基本
・言われたことはやるけれど、それ以上のことはやらない
・人の意見はよく聞くけれど、自分の意見は言わない。
・一番キライな役割はリーダー
・自己肯定感が低い①若者の定義の変化

彼らは、「目をつけられる」ことを、注目されることではなく、悪いことをした時の特別な関心の対象になると定義する。

一番キライな授業は「当てられる授業」。

ほめられると嬉しいが、人前でのほめは「圧」と感じる。

匿名にした途端に、質問やコメントはじゃんじゃん届く目立つことが大嫌い。

しかし、目立つこと自体が問題なわけではなく、ネガティブな印象をふくむ「意識高い系」でいることも「人から褒められる」ことも、問題なわけではない。

“自分が属する狭いコミュニティーの人たちに知られることが恐怖なのである“と筆者は語る。

いい子症候群の若者には、「恐怖」の二文字が常につきまとっている。

この場合の恐怖とは、自分が皆の中で浮いてしまうこと、自己紹介で失敗すること、「ちょっと変」「はい、出ました」と思われる(想像する)ことが恐怖なのだ。

・わかり易い例が紹介されていた「Hi,Mike!」事件

中2の1学期の最後に、帰国子女の生徒が転向してきた。「Hi,Mike!」の発音の一言が素晴らしい。
著者は心からかっこいいと思った。

しかし、ほどなくして、クラス内で「Hi,Mike!」が流行する。

給食を食べる時、サッカーでパスを出す時、トイレに行く時。
とりあえず言う。不意を疲れると、牛乳を吐き出しそうになったりする。

このような例からもわかるように、若者は目立つことや競争することを望まない。

リクルートスーツやエントリーシートの画一化も進み、近年では就きたい職業の第1位は公務員(地方公務員)だ。

彼らが地方公務員を志望する理由は、「安定していること」。

安定とは、つぶれないということよりも、安定したメンタルで働けるというニュアンスが含まれている。

いい子症候群の若者の仕事感
・人目は気になるし競争もしないけれど、自分の能力を活かしたい
・そこそこの給料をもらい残業はしないけれど、社会貢献したい
・積極的に働くことはしないけれど、個性を活かした仕事で人から感謝されたい
・社会貢献と言っても、見ず知らずの人に尽くすとかではなくて、とにかく「ありがとう」と言ってもらえるような仕事がしたい

注目すべきは、「社会貢献」というワードが出てくること。若者は社会貢献したい。

しかし、彼らが考える社会貢献は

・あくまで求められることをやる
・だから、批判も評価もされることがない
・自分で決める必要もない
・最終的には感謝もされる

現代を生きる若者は、自己肯定感が低い。

自分の意見や提案は受け入れられないと感じると、自分を責め、行動しなくなる。

結果、画一的な横並び主義が広がっていくことがよく分かる。

筆者は、第4部にて日本の若者の「いい子症候群」の背景を次のように分析する。

◎今の若者は、日本経済全体の成長が止まった後に生まれており、「挑戦が成長につながる」とう過程を実感できない。

→筆者は、挑戦につながることを実感できないのは大人であり、一度失敗すると這い上がれないと思っているのも大人であり、それが子供たちに空気感染していると記す。

私が強く印象に残った言葉は、「挑戦や変化が成長につながらず、チャレンジしても得られるものがないと思っているのは、大人がそう見せつけてきたからだ。大人のあなたが、まずは挑戦すべきだ。」である。

現時点で筆者が考える、若者の心を動かすフレーズは、
「自分はもう一度これをやりたい。今度は絶対成功させたい。だから手伝ってもらえないか」
と、若者の変化と同時に、大人の変化を大事なキーポイントとして提案している。

■「先生、どうか皆の前でほめないで下さい」をおすすめする理由

この書籍は、大学教授の視点から現代社会を生きる若者の姿が描写されています。

特に、若者の横並びで画一的な行動につながる「見えない心理」を、著者の言葉で的確に表現されているので、今までわからなかった若者の実態を具体的に掴むことができます。

そして何より、大人が勇気をもらえる1冊です。

大人が忘れていた大切な「挑戦」や「勇気」を感じさせてくれる、筆者の熱いメッセージがこもった本です。

この本を読んで、若者の前に、まずは自分が動き出そうと奮い立ちました。

大人が変われば若者もいい方向に変わる。社会もきっと良くなるはずです。新しい社会の入口となる本です。

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記事について

執筆者情報
名前:ちーた
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この記事を書いた人

マグ

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Twitterフォロワー数9万人の、読書系インフルエンサー。Voicyにて書籍紹介。1%読書術(KADOKAWA)著者